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趣味的音楽生活
リスナー歴20余年の音楽好きが、ひょっとすると住めば都かもしれない地方都市ここ岡山から、ジャンルを問わずその時々で気に入った作品を紹介いたします。アメリカンロックやSSW、ジャズから民謡、落語まで。気分次第で何でもアリ。
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REBECCA MARTIN/GROWING SEASON
カート・ヴォネガットの人気が凄いことになっている。

書店には文庫の新刊・復刊が平積みされ、テレビタレントが座右の一冊に彼の作品をあげる。
代表作『スローターハウス5』でさえ店頭から姿を消し、辞書を片手にわざわざ原書を読まねばならなかった僕の学生時代には考えられなかったことだ。
優れた作品が、多くの人々に親しまれること自体は喜ばしいには違いないけれども、しかし、こうも盛り上がってしまうと、「ホントかよ・・・」という気分になってくる。
先日も、待望の新刊『追憶のハルマゲドン』が発売されると知って書店に急いだが、店頭に並べられた現物を見て一気に買う気が失せた。タレントの太田某の意味不明な言葉が、帯にでかでかと記されていたからだ。
大袈裟に言うなら、ヴォネガットについて語ることは、人類の良心について語るにも等しい。このような作家は、もう少し繊細に扱って欲しい。

REBECCA MARTIN/GROWING SEASON
rebecca martin growing season

日本盤が出ないCDその2。
最近になってようやく朝晩はいくらかしのぎやすくなったが、まるで夏が終わるのを待ちかねたかのように、発売が遅れていたレベッカ・マーティンの新作が出た。
レコーディング自体は2年前には終了していたようなので、必ずしも彼女の現在の姿を十全に伝えるものとは言い切れないところがあるが、それでも待望の新作であることに違いはない。

前作が比較的大所帯での録音だったのに対し、今回は本人も含めて4人という小編成での録音。
彼女自身が意図したかどうかは定かではないけれども、少なくとも表面に現れた材料から判断する限りでは、もう一度初心に立ち返り、自己の原点を見つめ直そうという意思を感じさせるものになっている。そう考えれば、2002年発表の前々作『Middlehope』で大活躍していたギターのカート・ローゼンウィンケルと、夫のラリー・グレナディア(b)が揃って返り咲いているのも不思議ではない。

基本的には前々作~前作の路線を踏襲したものだから、目を剥くほどの新しい発見はないものの、そのかわり安心して聴いていられる。
曲のクオリティの高さも相変わらずで、いずれもスタンダード級の風格を備えている。
独特の湿り気を帯びたメランコリックな曲が多いが、表情はどこまでもクール。常に覚めた眼差しで自己を対象化しているようなところがある。
部屋中を吐息で満たすような、甘美で官能的な雰囲気に満ち溢れているけれども、ねっとりとまとわりつくようないやらしさはない。むしろ、さらっとして決して重くなり過ぎないのが、ヴォーカリストとしてのこの人の一番の魅力だろうと思う。

珍しくソウルの影響をストレートに表現したものや、カート・ローゼンウィンケルのいつになくロックなギターが炸裂する曲があったりして、意外な一面を見せているのが、まあ新しいと言えば新しい。
しかし、アルバム全体からみれば、ほんの隠し味程度の趣向に留まっていて、決定的に新しい彼女の魅力を引き出しているとは言いがたい。もっと冒険してもいいのではないだろうか。

さて、本作で早すぎる原点回帰を果たしたレベッカ・マーティンが次に向かうのは、一体どんな音楽の地平だろうか。

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テーマ:洋楽 - ジャンル:音楽

DANIEL MOORE/LIMITED PARKING
DANIEL MOORE/LIMITED PARKING
DANIEL MOORE/LIMITED PARKING

以前にも取り上げたことがあるダニエル・ムーアの新作が、前作から半年少々のインターバルを置いただけで早くも発表された。わずか一年足らずの間に三枚ものアルバムを世に送り出すなんて、その旺盛な創作意欲には目を瞠る。早速、聴いてみた。

前作と前々作の内容に不満があったので正直言うと大して期待していなかったのだが、いざ聴いてみると、想像以上に出来のいい曲もあり、恐れていたほど悪くない。ただし、近作の例に漏れず、手元にストックされた未発表音源の寄せ集めであろうことは一聴して瞭然なので、さすがに大傑作とまではいかない。まずは佳作といったところだろうか。
本人による打ち込みのドラムスや、シンセ類を多用した薄っぺらいアレンジが施された曲も少なくなく、そういう作品は概してつまらない。大体、そんなコセコセしたスタジオ・ワークや密室での周到な作業の積み重ねなどという、こじんまりとした箱庭的イメージから最も遠く隔たっていたのが、かつてのソロ・デビュー当時の彼の音楽性であり、その何物にもとらわれないスケールの大きさと豪放磊落な感じ、またその合間に垣間見える乾いたセンチメントこそが、名高い彼のファースト・アルバム最大の魅力でもあった筈なのだ。

今回のアルバムには、残念ながらそうした要素は稀薄であると言わざるを得ない。
しかし、それでもなお本作が佳作たり得ているのは、表面的な意匠の底に、まさしくダニエル・ムーア節とでも言うよりほかにない曲づくりの巧みさや、独特の鷹揚な味わいがあり、それが抗しがたい魅力を放っているからに他ならない。
とりわけ、冒頭4曲の出来は素晴らしい。
ペコペコしたお手軽な感じのアレンジではあるものの、リラックス・ムードあふれるポップ・ソウル風の①。ゴスペル調の分厚い女性コーラスを配し、かつてのスワンプ・ロック的な作風を想起させる②。枯淡の味わいの③。そして、「これぞダニエル・ムーア!」と、思わず膝のひとつも叩きたくなる、T・ボーン・バーネットも参加のグレートな④。いずれも、近作で披露された新曲の中では群を抜く出来栄えだと思う。
ところが、アルバムとしての完成度を保っているのはせいぜいこの辺りまでで、以後急速に曲の印象は薄れ、求心力を失っていく。
レオン・ラッセルとも浅からぬ縁を有し、かつてはシェルター・ピープルの一翼を担ったギタリストとして知られるドン・プレストンや、実弟のマシュー・ムーアなど、それなりに豪華な面子が参加した曲もあるのだけれど、いかんせん曲そのもののクオリティが大したことないので、あまり印象に残らない。アレンジ面でも、随所で聞かれるペラペラしたエレピの音が軽すぎてイヤだ。
何度繰り返し聴いてもこの印象は覆ることなく、やはり前半部分の鮮烈さこそが、本作最大の聴き所だろうと思う。この部分の良さをどれだけ認めるかで、人によってアルバム全体の評価も自ずと変わってくるだろう。

やはりこの人は、セルフ・プロデュースではなく外部から有能なプロデューサーを迎え、気の合った仲間たちと一緒にセッション形式で録音するスタイルが一番向いているのではないかという気がする。

引き続き、今後の作品に期待しよう。

テーマ:洋楽 - ジャンル:音楽

ON VINE STREET; The Early Songs of Randy Newman
ON VINE STREET; THE EARLY SONGS OF RANDY NEWMAN
ON VINE STREET; THE EARLY SONGS OF RANDY NEWMAN

ランディー・ニューマンが音楽家としてのキャリアをスタートさせたごく初期の頃に、ライターとして他人に提供した楽曲をまとめた作品集が発売された。
集められたのは62年から70年にかけて録音された全26曲。いずれも不滅の輝きを放つ愛すべき作品ばかりである。

ランディー・ニューマンは、大学時代の僕にとって最大のアイドルの一人だった。
決して多いとは言えない彼のオリジナル・アルバムは、すべて擦り切れるほど繰り返し聴き、グリル・マーカスのニューマンに関する批評を熱心に読んだ。当時は国内盤が手に入らず、やむなく自分で辞書をひきながら歌詞の内容を理解しようと試みたりもした。そこからアメリカの南部の歴史に興味が広がったり、フィッツジェラルドやナサニエル・ウェストらのロスト・ジェネレーションの作家に関心が向かったこともある。言わば僕にとっては、アメリカの現代社会史の案内役を果たしてくれた人物でもあり、その影響力は音楽家という枠組みをはるかに超えたものだった。
当然、ニューマン自身が発表した音源だけでは飽きたらず、他のアーティストがカバーしたものや、他人に提供した楽曲を苦労して探し求めては、自分でテープを編集してみたりもした。
恥をしのんで告白すれば、当時は自分こそが日本一のニューマン信奉者だと勘違いしていたところもあるかもしれない。

それほど思い入れのあるアーティストだから、今までもずっと、どうしてライターとしての彼にスポットを当てて楽曲を体系的にまとめた作品集が発売されないのか疑問に思っていたのだが、今回、イギリスのACEから本作が登場したことで、ようやく積年の願いが叶えらたことになる。
ランディー・ニューマンの書く曲は、フォスターやコープランドにも通じる、アメリカの原風景とでも言うべき心象風景を連想させるもので、映像的なイメージを強く喚起する点が際立って特徴的(この辺りは、著名な映画音楽家だったおじのアルフレッド・ニューマンの影響が大きいのかもしれない)。
最小限の音で綴られる、シンプルにして郷愁に満ちた限りなくやさしいメロディー。そのうっとりするような古風な旋律にのせて、ニューマンは中産階級的な価値観をおちょくり、神を皮肉り、誰からも相手にされない人々の心情を代弁し、アメリカの暗黒を歌う。それも一度聴いたら二度と忘れられない、老人のようなしわがれ声で。

そのパフォーマンスのアイロニカルな味わいは、ニューマン自身が演じなければ絶対に成立し得ないものだが、本作に寄せたピーター・バラカン氏のコメントが言うように、純粋にポップ・ソングとして他人がニューマンの曲を取り上げ、様々な解釈のもとで歌うのもまた、一味違ったユニークな面白さがある。
前半は有名な曲が多く比較的馴染み深いものばかりだが、最初期の作品が続く後半は今回初めて耳にする曲が少なくなく、これだけでも珍重すべき内容となっている。丁寧なリマスタリングが施され、音質が優れている点も特筆に値する。

全体を聴いてみて改めて感じるのは、やはりニューマンの書く曲のグレードの高さとその特異性。トレードマークとも言えるあの声こそ聞こえないものの、ここにいるのは紛れもなくランディー・ニューマンその人だ。楽曲の隅々にまで、消そうにも消えない彼の刻印がはっきりと刻み込まれている。

収録されているのは必ずしも初出となったテイクばかりではなく、ここに収められた録音以前に既に他のアーティストが何らかの形で取り上げているものも少なくない。またニューマンの場合、同じ曲を複数のアーティストがカバーしている例も多い。続編の発売に期待したい。

追記:ランディー・ニューマン本人のWEBサイトによると、この8月にNONESUCHから待望の新作が発表されるらしい。アメリカのポピュラー・ミュージック史上、最高の音楽家の一人の新作を同時代に聴けるとは、なんという幸せなのだろう!

テーマ:洋楽 - ジャンル:音楽

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